※本ブログは、2023年03月10日公開のIT mediaビジネスオンラインから一部抜粋しています。禁無断転載。
Web会議の音質が悪いと参加者の不快感情やストレスが増大し、理解力や判断力にも影響する――このような調査結果が、音響メーカー米Shureの日本法人であるシュア・ジャパンとNTTデータ経営研究所による実証実験で明らかになった。
コロナ禍でテレワークやハイブリッドワークが広がり、Web会議は社内ミーティングや商談などで当たり前の光景となった。これまでの対面会議と比較すると、会議用機器やネットワーク環境が原因で「相手の声が聞き取りづらい」という声も多く耳にするようになった。
また最近は、出勤者が会議室に集まりテレワーカーは遠隔地から参加する「ハイブリッド会議」も主流となり、新たに問題となっているのが「会議室にいる参加者の発言が聞き取れない」またそれによって「Web会議終了後に強い疲労感を感じる」というものだ。
その疲労感と音質はどう影響しているのか。実証実験からどのようなことが明らかになったのか。シュア・ジャパンの硲(はざま)夏希氏(インテグレーテッド・システムズ マーケティングマネージャー)と下村光生氏(インテグレーテッド ・システムズ プロダクトマーケティング)に話を聞いた。
(左から)シュア・ジャパン 下村光生(インテグレーテッド・システムズ プロダクトマーケティング)、硲夏希(インテグレーテッド・システムズ マーケティングマネージャー)
実験は日頃からWeb会議を行っている26~49歳のビジネスパーソン20人を対象に実施。「高音質なWeb会議」と「低音質なWeb会議」の音声データをランダムに聞いてもらい、内容を理解できたか、ストレスや不快感情を示す生体データの変化などを観察した。
その結果、低音質な会議は高音質な会議に比べ「内容が難しいと感じた」「内容が理解できなかった」という回答が多く、「聞き取りづらかった」は3倍近くになった。「結果から、音質によって理解度が低くなってしまうことが分かりました」と硲氏。とはいえ、このような主観的評価はいわゆる“自己申告”。では、測定した生体データは、音質とストレスにどのような相関性を示しただろうか。
硲氏は「低音質の音声を聞いたとき、被験者の心拍数は減少しました。これは、認知機能の低下を招くストレスを意味しています。会議に必要な理解や判断、それに基づく反応が即座に行えない状態を招く、簡単にいえば頭の回転が鈍っていくことが分かりました」と説明する。
また「眉をひそめる」時に動く皺眉筋(しゅうびきん)活動の測定結果からは、低音質の会議音声がもたらすストレスの時間的な変化が明らかになった。「低音質の音声データを聞き取っている間、皺眉筋の活動は増大し、時間とともにストレスが蓄積していることが明らかになりました」(硲氏)
つまり「冒頭は会議内容を聞き取ることに集中していたものの、徐々に聞き取れないことが明らかとなり、そのことに対する感情的なストレスが高まっていった」と考えられる。
これらのことから、Web会議の音質が悪いと「認知機能が低下する」「内容を理解できない」「ストレスは会議を通じて蓄積していく」という影響を参加者に及ぼしている結果となった。
「Web会議が日常になった今、この影響は見過ごせません」と硲氏はいう。
「相手の発言内容が聞き取りにくいとストレスが蓄積されるだけでなく、聞き直すための時間のロス、会議内容の誤認といった弊害が生じます。社内であれば生産性の低下や従業員のウェルネス低下、顧客相手では、会社のイメージ毀損、売り上げへの影響も考えられます。Web会議の音質を見直すことは、喫緊の課題であるといえます」(硲氏)
しかし、Web会議の音声問題はなかなか表面化されにくいもの。硲氏は「Web会議がストレスになる、発言が聞き取れないと現場が訴えても、組織側はそれを属人的な問題と認識し、利用者本人の改善努力に委ねてしまう傾向はお客さまからよく聞く話です」と指摘した上で、この問題が表面化されにくい理由が3つあると説明する。
まず1つ目は、自分の声を遠隔の相手が正しく聞き取れているのか自分では判断できない点である。スピーカーであれイヤホンであれ、マイクで拾われた自分の発言音声を自分で聞くことはできない。
そこに会議室から複数人がWeb会議に参加するハイブリッド会議が登場したことが2つ目の理由だと硲氏はいう。「自宅などのリモート環境から参加する時、ほとんどの場合はマイク付きイヤホンなどを利用します。マイクが口もとにあるため、声を拾えないケースはほとんどないでしょう。ところが会議室では、複数の人の発言を一つのマイクスピーカーで賄うことが多く、機器の仕様を超えた距離で発言するとマイクは拾いきれません。一方、先の1つ目の理由で会議室側の人たちはそれに気付けません。また音は目に見えませんから、十分に収音できる距離がよく分からず、総務や情報システム担当者も問題の原因が特定しきれていない場合もあるかと思います」
問題の3つ目は、会議室の発言が聞き取れない課題をどう顕在化していくかというプロセスだ。例えば、15人が参加するWeb会議を想像してほしい。20人が収容できる会議室に間隔をあけた上で7人が参加し、残りはリモートで参加していたとする。
「会議室から参加する人は役職者など会議体の主要メンバーである場合が多いと思います。商談の場合などは、取引先かもしれません。マイクに近い席の人の声は聞こえるが、離れた人の声は聞き取りづらい。その状況でリモート参加者から『すみません、声がよく聞き取れません』とはなかなか言い出しにくい。そうすると、リモートで参加する人は聞こえないまま会議に対する距離感が遠ざかっていき、参加意識が希薄になってしまいます。会議室側からは見えていない、認識できていないことがWeb会議の音声問題を潜在化させる要因の一つといえるでしょう」(硲氏)
かといって会議室のWeb会議用設備を構築する情シスや総務部門が「何もされてこなかったということではもちろんない」と硲氏。むしろ「コロナ禍当初は、オフィスと従業員の自宅を結ぶため、Microsoft TeamsやZoomなどWeb会議ツールのライセンス整備から始まり、すぐに導入できるタイプのマイクスピーカーやWebカメラを準備するなど、限られた時間と予算内で環境を整備され、大変なご苦労があったと思います」と振り返る。
しかし、状況の変化にまで対応できていない可能性も否定できない。オフィスに人が戻りつつある今、ハイブリッド会議も増えた。つまり、当初の想定より室内にいる人数が増え、設置した機器の対応人数を超えている可能性があるのだ。
ここまでで、Web会議における音質の重要性は分かっただろう。しかし、それなりのシステムをSIerなどの専門業者に依頼し、整備するには費用や時間がかかる。かといって情シス部門が同じことをやるには限界があるのも事実だ。
下村氏は「Web会議用設備を自前で整備する場合に立ちふさがる壁がある」と指摘する。それが、「システム設計」「設備・配線」「動作テスト」「部屋に合わせたしつらえ」「監視・管理」「ユーザートレーニング」の6つだ。
ここで下村氏が紹介するのが同社の会議室用音声デバイス「STEM ECOSYSTEM(ステム・エコシステム)」。情シス担当者だけで設置できるほど導入ハードルが低く、規模や用途に合わせて機器を組み合わせられる。また、自社で完結するため時間と費用を抑えられ、音響機器メーカーのシステムのため音質も担保されている。
STEM ECOSYSTEMを構成する6つのデバイス。これらを自由に組み合わせてWeb会議用設備を構築できる
STEM ECOSYSTEM製品群は6つのデバイスで構成している。
具体的には、スピーカーホンの「Stem Wall」(壁面型)と「Stem Table」(卓上型)、天井設置型マイクの「Stem Ceiling」、ネットワーク・スピーカーの「Stem Speaker」、それらを統合する「Stem Hub」と専用コントローラーの「Stem Control」。
「4つのオーディオ機器と2つのサポート機器を組み合わせることで、先ほど挙げた6つの壁を乗り越えられる機能と性能を備えています」(下村氏)
使用したい空間や意匠に合わせて製品を選択し、デバイスハブのStem Hubを使えば、最大10台まで連結可能だ。例えば中規模の会議室にSTEMデバイスを配置する場合、モニタ下にはStem Wallを、卓上にはStem Tableを使用することで、全エリアからの発言を収音できる。また、デバイスを追加することで収音エリアの拡張も可能だ。Stem Controlを使うことでSTEM ECOSYSTEMの全機能を操作できるほか、タッチ操作だけで会議もスタートできる。
中規模会議室での配置例
STEM ECOSYSTEMが提供するのはデバイスだけではない。機器構成の設計や動作テスト、管理を容易にする専用ツールも豊富に提供する。導入検討時にはWebサイト上にあるRoom Designを使えば、会議空間をほぼ忠実に再現し、購入前に必要なデバイスや台数を提示してくれる。
届いた機器を設置した後はRoom Adaptと呼ばれるツールを使用し1クリックで自動的に音響調整が可能だ。またRoom Checkが収音した発言者の声や室内のノイズ、反響音を把握してヒートマップを作成し、室内各エリアで予測される収音品質を表示する。
また、デバイスの稼働状況はRemote Managementが集中管理しリモートで確認できる。会議室の使用率やデバイスのログ、システムの使用状況確認からファームウェアの自動更新予約まで、同じネットワーク内の端末であればどこからでも確認・操作できるから安心だ。
「STEM ECOSYSTEMは今までにない新しいコンセプトの会議室用音声デバイスで、自由度が非常に高い製品群です。まずは一度お試しいただき、このコンセプトを体感してほしいと思います」(硲氏)
機器の選定から設定、管理まで専用ツールがフルサポートしてくれるSTEM ECOSYSTEM。期間限定で、Stem Tableを10日間無料で試せるフリートライアルキャンペーンを実施している。体験後は特別価格での購入も可能だ。
“その場しのぎ”で構築したWeb会議用設備を更新したい、ハイブリッド会議の効率をより高めたいと考えている担当者はぜひ一度STEM ECOSYSTEMを試して欲しい。扱いやすい製品群と、音を“可視化”するツールがWeb会議の質を向上させるはずだ。
Web会議の音が聞こえづらい!オフィスとリモートをつなぐShure製音声デバイスの実力は?“部門出社”が始まった記者が体験してみたら
Stem Ecosystemは、大規模な工事は不要で、情シス担当者だけでも自社に適したWeb会議環境を構築できる。一体どのようなソリューションなのだろうか。本当に、自分たちだけでシステムの導入を行えるのだろうか。折しも部署単位で決まった日にオフィスへ出勤する“部門出社”が始まったITmedia ビジネスオンライン 編集記者のウエマが、Shureを訪れ担当者を直撃。製品の設置などを体験した。
「Web会議室の機器こそ “オーバースペック”を」情シスコンサルのプロがおススメする製品の実力とは
Web会議ツールが普及し、リモートでも会議に参加できるようになった一方、オフィスの会議室から参加するメンバーと、自宅から参加するメンバーとの間に“溝”が生まれてしまった。「会議室の声が聞こえない」「いま何の話をしている?」。リモートワーカーが増えた段階で、多くの企業では会議室にWeb会議用音声設備を導入したはずなのに、なぜそのような事態になってしまうのだろうか。企業や政府機関の情報システム関連のコンサルティングを行うクラウドネイティブ社長の齊藤愼仁氏に、情シスが抱える会議室の音響に関する課題や、会議室構築の考え方、その解決方法を聞いた。