スパークプラグをはじめとしたセラミックス製品を手掛ける日本特殊陶業は、DXと働き方改革の推進、そしてイノベーション創出のために新しいオフィス棟N-FORESTを開設した。
同オフィスの開設に当たり、同社が「Web会議の音響」にこだわった理由は。
日本特殊陶業は、スパークプラグの製造を中核として、1936年に創業した。主力のスパークプラグはもちろん、自動車用排ガスセンサーでも世界規模のシェアを誇る。創業以来、高品質なセラミックス素材と技術力を生かし、切削工具や在宅酸素療法用装置、半導体パッケージ、半導体製造装置用部品など、多様な分野で活躍する産業製品を提供してきた。研究開発にも注力しており、固体酸化物形燃料電池や環境負荷を抑えた無鉛圧電セラミックスなど、先端技術の実現に取り組んでいる。
ビジネスを取り巻く状況が急激に移り変わる中で、強い競争力を保つには組織にも変化が必要だ。そこで同社は、2030年をターゲットとした長期経営計画の中で、事業ポートフォリオの転換を表明している。新規事業とDXを興す拠点かつ従業員の働き方改革を組織全体に広げる起点として、新オフィス棟N-FORESTを愛知県の小牧工場内に建設し、2021年9月に稼働を開始した。
N-FOREST建設前の小牧工場は、広い敷地の建屋ごとに事務機能(管理部や総務部など)を配置しており、互いに連携する機会が乏しかった。そこで、N-FOREST建設に当たって各建屋の執務室を廃止。事務・管理部門と新規ビジネス開発部門をN-FORESTに集約することでコラボレーションの機会を増やし、イノベーションを興しやすくするという狙いがあった。
N-FORESTの執務スペースは、全てのフロアがフリーアドレス制となっている。役員を含めた全従業員が自由にスペースを活用することで、部門間の「壁」を取り払い、コミュニケーションの活性化を図っている。
「内装やデスク配置などのフロアデザインは、若手を中心としたプロジェクトメンバーの自由な発想に任せることで、ユニークなオフィスになりました。各部門の代表が主体的にプロジェクト事務局を運営し、ルールの策定や活用方法の提案など、積極的に働き方改革を推進しています。N-FORESTはまだ稼働したばかりですが、他部署とのコミュニケーションが活発になるなど、効果が少しずつ出始めています」。日本特殊陶業の尾野寿哉氏(ビジネスサポートカンパニー総務部 課長)はこう述べる。
日本特殊陶業が働き方改革の一環としてテレワークに取り組む中で課題となったのが、コミュニケーションだ。別拠点で勤務している従業員や在宅勤務中の従業員とやりとりしやすい空間を提供することも、N-FORESTプロジェクトの重要なミッションの一つだった。
もともと日本特殊陶業は、小牧工場や名古屋市内の本社など複数の拠点をつなぐテレビ会議システムを導入し、遠隔会議を実施していた。しかし従業員宅にまでテレビ会議システムを導入することは困難だ。そのため同社は、導入が容易で技術的にも安定しつつあるWeb会議システムを導入。同時にN-FOREST内の全ての会議室(全25室)に、Web会議システムのための機器を新規導入することを計画した。
Web会議そのものはクラウドサービスを活用するが、会議室に設置するWeb会議用の機器は多岐にわたる。日本特殊陶業は最新の会議テクノロジーを積極的かつ効果的に活用したいと考えた。そこで同社は、テレビ会議システムの構築支援を受けたVTVジャパンに、Web会議システムの導入支援を依頼。VTVジャパンはN-FORESTの設計段階から参画して、会議室の設計を含む日本特殊陶業の要件を踏まえてシステム構築から製品選定、運用方法まで含めた導入計画を提案した。
日本特殊陶業の辻村靖裕氏(ビジネスサポートカンパニー総務部 副主管)は次のように述べる。「N-FORESTには、小さな会議室から広いセミナーホールまでさまざまなコラボレーションスペースがあります。自社だけで空間規模や用途に最適なシステムを設計し、それに合わせて市場にある膨大な機器の中からそれぞれに最適な機器を選定することは困難です。VTVジャパンは会議用AVシステムの設計と構築にたけており、他社の事例やトレンドを含めた最新の情報と具体的な解決策を提案してくれました」
N-FORESTにWeb会議用の設備を導入するに当たり、日本特殊陶業とVTVジャパンが特にこだわったのが“使いやすさ”と“音質”だ。Web会議では発言をはっきりと聞き取れなければ情報が伝わらない。極論を言えば、映像がなくても音さえあれば会議ができる。そして音質はマイク性能に強く依存する。
N-FORESTには大小さまざまな会議室があり、それぞれの仕様や用途に合わせて、多様な製品を導入する必要があった。部屋ごとに異なるメーカーやブランドの製品を選ぶのも一つの方法だが、それでは管理性や利便性が損なわれてしまう。そこでVTVジャパンは、Shureが提供する会議音響用製品を提案した。「製品ラインアップが多彩なため、N-FORESTの多種多様な音響要件を単一のメーカーでカバーできます。Shureの製品は高品質で故障しにくいことやサポートの手厚さに長年の信頼があり、日本特殊陶業が重視するポイントにも合致すると考えました」と、VTVジャパンの柳田 学氏(営業部ソリューションチーム シニアエキスパート)は述べる。
主要なWeb会議用の機器をShureの会議用ネットワーク対応製品群「Microflex Ecosystem」で統一したことで、高い利便性も実現できた。Web会議と言えば、マイクやスピーカーを持ち込み、ノートPCにケーブルを接続して……と、会議の開始までに機器の準備が必要となるケースが一般的だ。会議室に備え付けのシステムは、従業員が配線やスイッチを触って初期設定をうっかり変更してしまい、接続トラブルに発展することがある。
そこでVTVジャパンは「よくあるトラブル」を想定し、会議室に備え付けたタブレットの電源アイコンや音響機器の主電源スイッチをオンにするだけで、マイクやスピーカーを含む全ての機器が利用可能になるというシンプルに運用できる仕組みをデザインした。従業員が設定変更の必要を感じないよう、VTVジャパンとShureが持つ長年の経験を基に調整した「ベストな設定」で導入している、ということだ。同社はN-FORESTの利用者向けに、音響機器がどうすれば使いやすいか、どうすれば管理が楽になるかといったことを記載したマニュアルも作成した(写真1)。
「以前は『音声が聞き取りづらかったので、音響機器をいじったら設定が変わってしまった。動かなくなった』といった従業員の訴えが頻繁にあり、私たち総務部が会議室に出向いて直すことが度々発生していました。新たに導入したN-FORESTの設備は、音量ダイヤルすら一切触れないようにしてあります。今でも新しい設備やシステムに関する問い合わせはありますが、トラブルの相談やクレームはありません。Shureのマイクは音質が良く、利用者が音を調整する必要がないためでしょう。問い合わせが減り、管理負担を大幅に削減できています」。日本特殊陶業の小川博氏(ビジネスサポートカンパニー総務部 主任)は現状をこう話す。
N-FORESTの会議室の仕様を大別すると「役員大会議室」「セミナーホール」「会議室」の3つとなる。それぞれの部屋に音声と制御信号をネットワーク伝送できるMicroflex Ecosystemシリーズの音響機器が導入されている。役員会議室はグースネック型マイクとスピーカー付き台座という広い会議室に適した組み合わせを座席数分用意した。
大型スクリーンと複数のサブディスプレイを設置した200人規模のセミナーホールには、ワイヤレスマイクを複数台配備した。柳田氏によれば、Shureの製品は一般的なB帯(免許の必要なく利用できる800MHz帯の周波数帯)の製品でも十分な性能を実現できたという。入力から出力まで音質にこだわり高い利便性を備え、外部にも貸し出せるほどの設備になっている。
従業員同士や取引先企業とのコミュニケーションで使うことを想定した小会議室には、天井埋め込み型で複数の発言者の声を拾えるMicroflex Ecosystemの「シーリング・アレイ・マイクロホン」である「MXA910」を導入した(写真2)。N-FORESTの内観に溶け込み、会議テーブルの邪魔にならず、収音性が非常に高いのが特徴だ。従業員が触れない天井や壁に設置できるという点は、音響トラブルを防止したいという同社のニーズにも沿っている。従業員も、マイクの存在を意識せずに遠隔の相手と自然に会話ができることでスムーズな会議への参加が可能になることや、マイクに触れる必要がないため感染症リスクを抑えられるといったメリットが得られる。
日本特殊陶業の西村一希氏(ビジネスサポートカンパニー総務部 総務課)は、シュア・ジャパンとVTVジャパンの導入前後のサポート体制を高く評価する。両社が密に連携し、N-FORESTプロジェクトメンバーへの実機デモンストレーションの場で具体的な議論ができたことが、スムーズな機器選定につながったという。「Shure製品はデザインが洗練されており、操作性がシンプルで性能も良いところが気に入っています。シュア・ジャパンとVTVジャパンは私たちのニーズをしっかりと吸収し、利便性と音質を徹底的に追求してくれました。期待していたことを十二分に実現してくれたと感じています」(西村氏)
今後も日本特殊陶業は、N-FORESTを中心にDXと働き方改革を推進する。テレワークとオフィスワークの従業員が混在する職場でも、高音質で安定したWeb会議システムがあれば、臨場感のある会議をいつでも開催して綿密なコラボレーションができる。働く場所が離れても、これまで以上に近い仲間として、新しい日本特殊陶業を作り上げていくだろう。
シュア・ジャパンとVTVジャパンは今後も、ユーザー企業の快適なコミュニケーションの実現に努める意向だ。「お客さまのご要望を細かくヒアリングし、最適な会議室のシステム設計と運用方法を提案させていただきます。まずはお気軽にご相談ください」(柳田氏)
【転載元】
メディア名:アイティメディア TechTarget/掲載日:2022年02月24日/提供:シュア・ジャパン株式会社、VTVジャパン株式会社
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